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 美由紀 さんインタビュー

島本  美由紀

しまもと・みゆき

料理研究家・食品ロス削減アドバイザー。旅先で得た様々な感覚を料理や家事のアイデアに活かし、身近な食材で誰もが手軽においしく作れるレシピを考案。ラク家事アドバイザーや冷蔵庫収納や食品保存のスペシャリストとしても活動し、NHK「あさイチ」や日本テレビ「ヒルナンデス!」などに出演。テレビや雑誌を中心に活躍し、著書は80冊を超える。一般社団法人「食エコ研究所」代表理事も務める。

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食の「もったいない」を考える料理研究家 島本美由紀さん

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島本さんは料理研究家として、どんな分野を得意としていますか。

日本人の生活は日々追われていることが多いので、身近な食材で少しでも食事作りがラクに、楽しく、美味しく食べられる時短レシピが1番得意です。また、「旅する料理研究家」という肩書を持っているほど、旅が大好き。東南アジアを旅していると朝はおかゆを外の食堂で食べたり、夕食は屋台で買った料理を持ち帰って家で食べたり。朝昼晩、料理を作るという習慣がない国もたくさんあるので、家事を減らす工夫もレシピに加えながら紹介しています。
世界には、食べたくても食べられない子どもたちがたくさんいます。そういった子どもたちをたくさん見てきたので、食品ロス削減アドバイザーとして、食の「もったいない」を減らしていく取り組みも研究しています。
例えば、ピーマンを調理するときに、種の部分を取ってしまいますよね。種とワタの部分には、ピラジンというピーマンの香りや苦みの原因となる栄養素が、緑色の実の部分の10倍含まれています。ピラジンには血液をサラサラにして、生活習慣病を予防する効果があると言われているので捨ててしまうのはもったいない。昔は丸ごとおひたしにして食べていた部分でもあるのに、食感や見栄えが悪いということで、取って捨ててしまうことが多いのですが、種とワタ、ヘタの部分もやわらかく煮れば、丸ごと食べられます。捨てることで生ごみが増えて、家事を増やす原因にもつながっています。
ニンジンの皮もそうです。畑にあるニンジンは表面がでこぼこしていて、ひげが生えていますが、出荷の際、ブラシで薄皮を取り除いているのでニンジンを買ってきたら、しっかり水洗いするだけで、皮はむかなくても食べられます。ヘタの部分は千切りにして炒めれば、固い食感も気になりません。捨てる罪悪感から解放されるだけでなく、地球環境保護にもつながるので、何気なく捨ててしまう部分おいしく食べきる使い切りレシピを提案しているのも他の先生と違うところかなと思っています。

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食品ロスの現状と、食品ロス削減の意義についてどう考えますか。

日本の食品ロスは令和3年度で年間523万トンと言われていて、その半分近くが家庭から出ています。主な原因は3つ。本来は食べられるのに捨てられてしまう過剰除去、作りすぎでの食べ残し、気づいたらキュウリがしなびていたといった直接廃棄です。お金に換算すると、4人家族で年間約6万円の食材を捨てているデータ(京都市試算)もあり、何万トンと言われても想像しにくいのですが、年間6万円捨てていると知ると、驚くし、もったいないと実感すると思います。何気なく捨ててしまっている野菜の皮の部分などにこういった栄養があると伝えることで、食べてみようという気持ちになってくれるので少しでも家庭からの食品ロスを減らすためのアイデアを本や雑誌、講演会などで伝えています。
作りすぎの原因は、多めに作ってしまうこと。過剰除去は、どこの部分を本来食べられるのかを知らないことが原因です。直接廃棄では、野菜をどう保存したら長持ちするのかという保存方法を伝えることで、料理が苦手な人でも、取り組みやすいです。この3つを軸に、自分に合うものを1つでも試してもらえれば家庭からの食品ロスが減ると思います。捨てる罪悪感から解放されるし、全部食べると気持ち良いですよね。地球温暖化で気温が上昇しています。日本の暑さは異常だと感じます。農作物が被害を受けています。それが食卓にも響きます。私たちは地球に住まわせてもらっているので、心地よく暮らしていくために、みんなが家庭からできるエコから始めてほしいと思います。

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教育現場での食育の必要性

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食育の必要性をどう考えますか。

食べるという漢字は「人を良くする」と書きます。人の気持ちや思いやる心を、子どものころから育んでいくのが大切だと思います。給食からの食品ロスは1人当たり年間17キログラムです。作っている時に出るものを除くと、食べ残しは1人当たり年間7キログラムです。ピーマンが苦いから嫌いという子でも、調理方法を変えると食べられることがあり、どんな人がどんな思いで作ったのかを伝えていくことも大切です。
私が講師となって直品ロスの現状を教え、過剰除去を防ぐ野菜の切り方なども教えているのですが、家庭科の授業で、無駄が出ない切り方を知ると、大人になってからも使えます。SDGsの取り組みのグループワークをして、食品ロスをどう減らすかを考えていくことも学校の授業では必要だと思います。

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教育現場では、給食などを通じて、どのような食育を進めることができるでしょうか。

小中学校では、給食を作っている場所を子どもたちに見せるとか、学校の敷地内で野菜を育てるということができるといいと思います。野菜や肉はスーパーで買うのが当たり前になっていますが、その前の段階を見せることで、子どもたちは無駄なく食べようと心掛けてくれるはず。以前講演で訪れた小学校では、農家にお米の栽培を頼み、収穫したお米を使って、私がおにぎり教室を開きました。稲が小さかったころから見ていたので、愛情を持ちます。小学生にはクイズ形式でやると楽しんでくれると思いますので、クラス対抗で給食のロスを減らすというのも面白いと思います。

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食品ロスに関心を持ってもらうにはどうしたらよいでしょうか。

話して伝えるだけでなく、学校で実験をしてみたり、YouTubeなどで参考になる動画を子どもたちに見せたりすると興味を持ってくれると思います。

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これから教員を目指す学生に一言お願いします。

子どものときに見たり聞いたりした体験は、後々まで残ります。おいしかった、ありがとうといった、心地よい気持ちになるような授業を考えて、積極的にチャレンジしてほしいと思います。料理はたいへんとか面倒とか、マイナスなイメージを持つ人が多いのですが、本来は楽しく、気持ち良いものであってほしい。気持ち次第で食卓も明るくなると思うので、100%やらなければいけないではなく、手を抜けるところは手を抜いて、できるところはがんばろうという教え方をしてもらうと、子どもたちも伸び伸びと生活できるのかなと思います。

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