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 インタビュー

赤プル

あかぷる

茨城県常総市出身。夫と夫婦お笑いコンビ「チャイム」を結成。太田プロダクション所属。2017年7月、防災士の資格を取得し、防災芸人として活躍。調理師免許、整理収納アドバイザー1級、収育指導士など多くの資格を持つ。いばらき大使、常総市ふるさと大使。

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いざという時の命を守る​マイ・タイムライン

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赤プルさんが防災に関心を抱いたきっかけは何ですか。

2015年の関東東北豪雨で、地元の茨城県常総市で大きな被害が出ました。鬼怒川の堤防が決壊したのですが、4300人が逃げ遅れました。避難が遅れて孤立し、救助が必要になったのです。その中に、私の姉家族5人が含まれていました。家族は車で川の様子を見に行って、川からの水が街に入っているのを見て、あわてて家に帰ったけれど、川水の流れが速く、身動きが取れなくなったということです。早めに救助を受けられて無事だったことは幸いでした。
この災害の後、地元に何かできないかと考え、最初は被災地支援の募金やチャリティー活動をしていました。その際に、防災ネタを作ってほしいと言われ、それなら勉強しないといけないと思いました。防災士という資格があることを知り、それを取得しようと思いました。防災士の資格を取った後は動画で防災に対する訴えをしたり、仕事で防災のことを話すことが増えました。

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防災士の資格を取るための勉強で、どんなことを学びましたか。

2日間、講座を受けるのですが、分厚い教科書に、災害のメカニズムや防災、復興のことなどが書いてあります。特に印象に残ったことは、防災グッズを買うよりも、野菜を乾燥させておくほうがよっぽど役に立つんだよということを、元消防団員の女性が講座で教えてくれたことです。防災食を買いがちだけれど、わざわざ買わなくても自分たちで準備しておけることが大事だということです。
講師の方から「ここで災害が起こったら、半分の人が亡くなるかもしれない。亡くなる人を減らすのが防災士の役割だ」と激しい言葉で言われたとき、防災士としての責任感を持たないといけないと思いました。2017年に防災士の資格を取得しました。

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マイ・タイムラインの普及を呼び掛けていますね。

常総市の復興イベントで、「防災士の資格を取りました。何かやらせてください」とお伝えしたときに、「マイ・タイムラインというものができて、普及させたいから、マイ・タイムラインリーダーになりませんか」と声をかけられました。鬼怒川を管轄している下館河川事務所の独自の取り組みです。地震は突然発生しますが、水害は事前に台風や大雨があり、予想されるものです。
マイ・タイムラインは、いざというときに自分たちが慌てずにどういう行動を起こすか、どのタイミングで逃げれば命が守られるかを、事前準備として作成しておくものです。被害にあった住民の皆さんが2年間、下舘河川事務所と協議を重ねて、マイ・タイムラインが有効だということになり、ツールを作りました。そもそも、タイムラインというものがアメリカのハリケーン対策で使われていたそうで、それが日本でも導入され、行政機関がタイムラインを作っていました。それを住民一人ひとりにも使えるのではないかと、マイ・タイムラインができました。さらに、それをもとに、誰でも作れる簡単なものということで、「逃げキッド」というツールができました。
マイ・タイムラインは資料を読んだだけでは自分たちで作ることが難しいので、常総市と河川事務所が協力して、ファシリテーターをできるボランティアを育てています。マイ・タイムラインを作成するイベントがあり、それを受けて私もリーダーになりました。全国のマイ・タイムラインを作りたいという人たちのところに行って、作り方をお伝えしています。受けている方たちには、リーダーになって地域の人たちと一緒に作ってくださいねと言っています。
常総市の水害の後、西日本で豪雨被害がありました。マイ・タイムラインや逃げキッドがもっと早く普及されていれば、逃げ遅れずに助かった命があったかもしれないと考えると、マイ・タイムラインがもっと皆さんの身近なものになっていくといいなと思っています。

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先ずは自分たちのリスクを知る防災教育を

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学校での防災教育の現状はどうなっているでしょうか。

マイ・タイムラインは地元の中学校、高校で動画を見ながら自分たちで作成するということが広がりつつあるそうです。そのように変わってきている面があるのですが、私たちが受けてきた避難訓練というのは、実践的ではなかったという印象があります。それが今も続いているところがあるとも聞きます。「押さない、駆けない、しゃべらない」の頭文字を並べた避難訓練の標語「お・か・し」を教わったりしましたが、それよりは何のためなのかを教えていくほうが大事だと思います。
例えば、今ここで地震が発生したら、どういうことが起きるのかということを想像する力、どうすれば自分の身を守れるのかを考える力をつけさせる。こうすべきだと言われていることは、このためなんだと、自分に落とし込めるようにする。考えたり、知恵を身に着けることが大事だと思っています。

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マイ・タイムラインは授業の中で教えることが可能ですか。

マイ・タイムラインは、自分の住んでいるところのリスクを知り、水害がどうして起こるのか、自分たちがどう行動するのかを考えます。自分たちのリスクを知るということが要で、それなら1時間授業の中でも可能だと思います。
川が氾濫したときに、浸水する地域なのかどうか、どのぐらいの高さまで水が来るのか。0.5メートルだと、1階はだめだけれど2階に逃げることができます。入ってきた水が何時間で引くのかという浸水継続時間を知るだけでも、準備が変わってきます。家屋倒壊氾濫想定地域というものがありますが、堤防が決壊したときに家が流されるか流されないかということで、避難行動が変わってきます。自分が知ることで、自分がどうするかを考えられます。
マイ・タイムラインは自分事に落とせる素晴らしいツールだと思っています。

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学校教員にとって、防災教育をするというのは、ハードルが高いことではないでしょうか。

先生たちが子どもたちに防災教育ができるプログラムを作成中だという話を聞きました。防災教育を義務教育の中に取り入れるべきだと考えている方はたくさんいると思います。私も防災士になったときに強くそう思いました。防災教育の基礎は学校で学べるといいなと思います。先生方も学ぶ機会を作ってほしいと思います。

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赤プルさんは整理収納アドバイザー1級を持ち、片づけのプロでもありますが、片付けと防災の関連はありますか。

災害時に避難することも大事ですが、東京都では避難所も少なく、建物に問題がなければ、在宅避難も推奨されています。そうなったときに、家の中が安全であること、家の中のどこに何があるのかを分かっていることが重要です。
地震の場合、発生時に倒れてくるもの、落ちてくるものがある。出しっぱなしの包丁が飛んでくるとか、菜箸が凶器になったという話も聞いたことがあります。何気なく置いていたものが命を奪う恐れがあります。普段から家の中を片づけておく、家の中を安全にしておくことが一番の防災になります。片付けが防災になるということは、私自身、気が付いたときに、目からうろこという感じでした。そこは強く訴えていきたいと思います。
防災士の講座で、最初に家族会議をするということを学びました。片付けも家族会議が大事で、どこに何があるのかを家族が共有することが大事です。家族会議を開いて、みんなで片付けをすることが防災の第一歩だと思います。

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