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 秀一 さんインタビュー

滝沢  秀一

たきざわ・しゅういち

1976年、東京都出身。

1998年、西堀亮さんとお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。

「THE MANZAI」2012、14年認定漫才師。

2012年、定収入を得るために、お笑い芸人の仕事を続けながらもごみ清掃会社に就職。お笑い芸人との二足のわらじとして活動し、2018年にごみ清掃員としての体験を綴ったエッセイ『このゴミは収集できません』(白夜書房)を出版、ベストセラーとなる。以降、ごみ問題、ごみ清掃業界の優れた人材などを題材に、多数の著書を出版。ごみ分別の仕方などを発信するツイートも人気を集めています。講演では、お笑い芸人がごみ清掃を始めてたどりついた“ごみ学”を語り尽くします。

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ごみが捨てられなくなる前に。

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まず、ごみとの関わりから教えてください。

元々はごみや環境問題に興味があったからではなく、収入を得るためでした。
僕がごみ清掃員を始めたのは36歳のときですが、知識ゼロの状態でした。実際にごみ清掃員の仕事を始めて、まず驚いたのは、ごみの量です。
ごみ清掃車は2トンぐらいのごみが入ります。それを満杯にしたら1日の仕事が終わるように思うかもしれませんが、これを1日6回やる。10~12トンのごみを回収するのです。清掃工場に行くと、僕の仲間がいっぱいいるのです。ということは、うちの会社の担当地域だけでこれの10倍、20倍のごみを1日で回収しているわけです。
回収したごみをためるごみピットは縦横40m×30m、深さ20mぐらいあって、そこにたくさんのごみ袋があるのです。年末年始にはごみの量が増えます。年末の大掃除とか、断捨離なんかすると、すごいごみが増えます。清掃工場では1回処理をしないと、次の処理ができないので、清掃車に乗ったまま待たされます。最大2時間半待たされたことがあります。
ベテラン清掃員に「日本はごみで埋まらないですか」と聞いたら、「ああ、埋まるよ。中防はあと50年だろ」と言われました。中防というのは東京湾にある中央防波堤最終処分場のことです。僕はこれを聞いて、ごみのことに興味を持ちました。調べてみると、環境省のホームページに、日本全国の最終処分場の残余年数が22.4年だと書いてあります。日本全体のごみの量と最終処分場の容量を割ると、あと22年たったら、ごみを捨てられなくなる。それをみんな知っているのか。僕は知らなかった。それを知った上で、どうやって行動を変えていくかということです。それからは、ごみの量を減らしましょうと、言い続けています。

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どんな、ごみルールを知ってもらいたいですか。

まずは分別です。ごみと資源の区別がついていない人がいます。
「資源ごみ」と言う人がいますが、僕らの世界では「資源ごみ」と言うと、怒られます。「資源であって、ごみではない」と。可燃ごみの中に、ペットボトルやビン、缶が入っていなければ分別しているということではなく、カレンダーやお菓子の箱といった紙類など、資源になるものがあります。最終処分場で燃やしてしまったら、灰になり、本当のごみになります。ごみとして捨てるか、資源になるか。その区別をつけることが大事です。ごみは2種類しかありません。可燃ごみと不燃ごみです。それをまず知ってください。それ以外は全部資源です。

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分別がきちんとされていると感じますか。

地域によって違います。きちんとされている地域もあれば、全くやらない地域もあります。ビンや缶を平気で入れる地域もあります。
ごみって、伝染するのです。分別せずに出す人がいると、自分もそれでいいと思い、まねするのです。きれいに出している地域は、みんながきれいに出します。ごみを通して、思いが伝わるのです。

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集めていて、驚いたごみはありますか。

最初に驚いたのは、90リットルの袋全部に、エノキバターが入っていたことですね。エノキを醬油でいためた香ばしい食べ物です。同僚と持ち上げて、何だろうと中を見てみたら、全部がエノキバターなのですよ。閑静な住宅街で、周りに飲食店もない。業務用ではない。エノキバターパーティーでもしたのか。居酒屋のつき出しにしては量が多すぎる。結局、謎なまま終わりました。

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​ごみルールを楽しく習って、ごみを資源に!

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自治体によって、ルールが違いますね。

自治体によって人口の違い、契約している工場が違いますので、ルールが違います。
その自治体によって、最もやりやすいルールにしています。
人口が少ないのに立派な清掃工場があるとします。清掃工場では運営費、修繕費がかかるので、分別を徹底したほうがいい。その自治体に合ったベストな方法を見つけているのだと思います。分別のルールが違っても、共通の環境認識は持ったほうがよいと思います。プラスチック製品を使うのをなるべく減らすといったことです。

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ごみ問題やごみルールを学校教育に取り入れるべきだと考えますか。

僕は取り入れるべきだと思っています。
自分の地域のごみの出し方も分からない子どもが多いと思います。ごみの分別が間違っていることがよくありますが、それは半ば仕方がないと僕は思います。ごみのことを習った人は誰もいないのです。だから、小学校低学年の道徳の時間などで、年に1回でもいいから、こういうルールですと教えてほしい。そうすれば、基盤ができるから、引っ越したときでも、あの地域と違うななどと、分かるのです。
僕は幼児教育で、紙芝居によって分別を教えようと思い、紙芝居を作りました。この間、自分の子どもが通う保育園で紙芝居をやってみました。マシンガンズを24年やっていますが、その中でも一番受けました(笑い)。もう1回やって、もう1回やって、と言われて。楽しみながら、分別を覚えるというのは大事だと思います。
どうして、これをやったかと言いますと、スウェーデンがごみ処理先進国なのです。ごみ不足が起こるぐらいの国です。要はエネルギーに変えています。他の国からごみを輸入して、エネルギーに変えています。ごみビジネスが成り立っているそうです。どうしてそういうことができるかと言うと、保育園のころから分別の教育を始めるそうです。ヨーロッパは陸続きなので、環境的に変なことをすると、他の国に迷惑をかけます。だから、どこの国も環境意識が高い。その一環で、分別教育をしているのです。日本でも、それをしたほうがいいと思います。学校の先生が教えてくれると、一番いいですね。

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教員自身もあまり詳しくないかもしれません。

先生もごみのことを習っていません。だから、教える人を教えたいと思っています。
保育園の先生とか、小学校の先生とか。先生自身も、ごみ分別のことを知っているかというと、自信がない。なので、先生向けの講座を開いて、ごみのこと、紙芝居のことを教えるということをしようかなと思っています。

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美化教育はあっても、ごみ教育はなかったかもしれませんね。

掃除の仕方は習っても、家でどうやってごみを捨てるかは習っていないでしょうね。
保育園や小学校で教えると、子どもたちはやりたがるのですね。授業を提供する人がいれば、子どもたちは喜んでやると思います。面白がって、親に教えたら、親が知らなかったとか。そういうコミュニケーションを取って、楽しいと思います。

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子どもの気づきによって、家庭も変わりますね。

ごみって、誰にも相談せずに捨てますよね。誰も見ていないところで、どういう自分なのかが丸出しになるのです。その人の本性が表れる。
包丁をそのままごみ袋に入れる人もいます。捨てた先のことを考えていない。見えないものに対する思いやりがないとか。捨て方に性格、人間性が出ます。捨て方も学校で教えるべきだと思います。

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ご自身の家庭では、どうしていますか。

子どもに「やれ」と言うと、意外とやらない。親が楽しんで、やるのが大事だと思います。
ごみ清掃員になる前は、家族4人、週2回の回収で45リットルの袋を1回2袋か3袋出していました。1週間で4~6袋の可燃ごみを出していたのです。
紙の分別、余計な洋服を買わない、プラスチック製品を買うのを減らす、生ごみはコンポストで処理するというようにしました。
すると、ごみはけっこう出ません。週1回、45リットルの袋を出すだけになりました。

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子どもたちに伝えたいこと、学校の教員が子どもたちに教えてほしいことは。

「ごみがなくなったら、仕事がなくなるだろう」と言われることがあります。
僕はこれだけごみがあるのを見ているから、少しぐらい減っても、なくならないと知っています。小さいおむつのごみを見ると、「人間って、生まれた瞬間にごみを出すのだ」と思いました。一生、ごみを出し続けます。出し続けることは仕方ないにしても、すごい量のごみを出さなければいい。ごみを大量に出すと、いろいろな人に迷惑をかけるのですが、その自覚はあまりないと思います。
僕はごみがなくなっても、全くかまいません。ごみがなくなれば、リサイクルの仕事をすればいい。ごみを減らして、資源を大切にする。日本は資源の多い国ではないので、資源を大事に使わないといけないと思います。
ごちゃまぜに出されると、我々も分けられない。それはごみになります。手元で分けてくれると資源になります。これだけの差が出ることを、みんなに知ってもらいたいですね。

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