さんインタビュー

内田  良

うちだ・りょう

名古屋大学教授。ヤフーオーサーアワード2015受賞。

消費者庁消費者安全調査委員会専門委員。

学校カエルちゃんねる http://goo.gl/oU1qa5

学校リスク研究所 http://www.dadala.net/

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これからの未来には持続可能な部活動が必要

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今回は『ブラック部活動』などの著書があり、学校教育の抱える問題に詳しい名古屋大学大学院准教授の内田良さんにお話しを伺います。宜しくお願いいたします。

宜しくお願いいたします。

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早速ですが、最近ニュースなどでもブラック部活動や教師の働き方について報道されることが増えていますが、世間からみた学校(教職員)のイメージについてどうお考えでしょうか。

そうですね、私はリスク研究という形で学校の問題を考えているのですが、そこで大切なのがリスクの見える化です。良くも悪くもまず見える化することで、対策がたてられるわけです。長時間労働や部活動の問題など、ここ数年で負の部分が見えてきたことは一見良くない印象に繋がりますが、むしろ明るい未来へ進むための大切なプロセスだと感じます。
また、見える化することにより当事者である先生たちが声をあげやすくなるのです。今までは子どものためなら時間やお金なんて言っていたらダメ、土日も含めて尽くすのが先生、みたいな教育文化がありましたが、何も言わないからこそそういう文化が正当性をもって続いてしまったのです。それがようやく、ちょっとしんどいよね、と声をあげられることにより職員同士で議論ができたり、保護者の理解にも繋がっています。

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なるほど。問題が沢山出ていることだけを見るとマイナスな感じがしますが、改革をしていく上では良いプロセスなのですね。

長時間労働は量が膨大すぎるのでなかなか簡単に解決というわけにはいかないですがここからが大切ですよね。そういう意味でも、声を上げることはとても重要です。良くも悪くも先生たちは学校に行けば仮面をかぶって、立派に教師としてふるまうわけです。
でも統計などで数値的に長時間労働が問題として明らかになってきて、しんどいよねと言えるようになってきた。やはり、人の気持ちに訴えかけることができるのは数値じゃなくて生の声なのです。こういう流れはとても良いものだと感じます。

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最近はSNSの普及もあって声をあげやすくなっていますよね。

そうですね。こういうことって今までは当事者である先生が声をあげていたのが、そのご家族の声も見られるようになって。
衝撃的だったのは、Twitterで教員の妻のつぶやきを見たのですが、「GWに顧問の部活動の試合が決まり、おめでとうと言いたいけど子どもは泣いている」とありました。恐らくGWに家族でお出かけできればという思いがあったのでしょうね。教員本人ではなく、ご家族の声というのもすごく訴えてくるものがあると思い、これは何とか解決しないといけないと更に感じました。

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教職員の先生方も、先生である前に1人の人間で、家族がいて、生活がありますよね。どこかそれを犠牲にしてもやる、みたいなことが当たり前になってきてしまったのですね。長時間労働でも特に部活動に関して取り上げられることが多いですよね。

教員の働き方改革で最初に火をつけたのが部活動で、やはり重大課題だと思います。
教員の長時間労働にしても、部活動にしても、教職や部活動自体が問題なのではなく、負担が大きすぎるところが問題なのです。その負担を取り除いていけば、純粋に魅力だけが残ります。これから明るい未来を考えるために大切なのは、いかに皆が無理せず楽しめるかということです。
部活動の理想は、やりたい先生ができる範囲でやる。ただし、今はほとんど制限がないかのようにたくさん時間を費やしていますが、例えば大会の参加条件として、練習週3日までという上限を厳格に設定するなど、皆が同じ条件でやれば負担を減らしながら部活動の良さを残すことはできると思います。持続可能な部活動というのがこれからの未来には必要です。

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なるほど。例えば土日は部活動なしと決めてしまえば、負担は減りながら部活動の楽しさは味わえますし、負担が減るメリットは先生だけではなく、保護者や、生徒本人にもありますよね。

あくまで教育の一環としての部活動なので、それ以上に例えばメダルを目指す、ということなら学校外で本気で取り組めば良いのです。

新しい文化を取り入れて、働き改革を。

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若手の教職員や、これから目指す人は理想の教育現場にするために、何ができるのでしょうか。

若い皆さんにお伝えしたいのは、新しい文化を持ち込んでほしいなと思います。
これまでの文化はタイムカードがなく時間をはからない、つまり給特法により時間外労働がないものだとされ、長時間労働の背景となっています。是非若い皆さんの感性で見える化を徹底してほしいなと思います。
先日非公式に若い先生と座談会をしたのですが、そこで聞いたのが“休憩もなくてしんどい”と。確かにいわゆる労基法の休憩なんかはほとんどなくて、いつでも子どもがやってきて、やってきたら応じるという、自由時間がないのです。国の統計でも小学校の担任は休憩時間1分ですからね。そこでその先生に、休憩時間は何時か尋ねたのですが“分かりません”と返ってきたのです。一応定められてはいるはずだけど、要は従来の文化に染まってしまっているのです。そこをフレッシュな目線で新たな時間管理の文化をつくり出してほしいです。

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1分とは驚きです。それだけノンストップ労働なのですね…。

あとは教員の専門性ってなんだろう、ということを考えてほしいなと思います。
何でもかんでも教師の仕事ではないはずで、手放すべき仕事がもっとあるのではと思うのです。大学を卒業したばかりの皆さんなら自分たちの専門性は良く理解しているはずなので、その専門性をもって教育に向きあってほしいなと思います。
あと懸念していることが、長時間労働は部活動改革で広がったために、部活動について常に話題になるのですが、そうなると小学校の先生の問題が見えにくくなるんですよね。先程仕事を“手放す”話をしましたが、現状小学校の先生が手放せる仕事ってほとんどなく、負担を減らすためには人を増やすしかないと思っています。そこで現場の声をどんどんSNS等で行政にあげてほしいのです。

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確かに今はTwitterでも、世の中を変えるようなムーブメントが実際に起きていますよね。

その通りです。働き方改革もTwitterの影響がかなり大きいと思います。
Twitterは細分化していけばたった一人の匿名の声なので、普通に考えたら影響を及ぼすとは考えられないのですが、それが集まった時の影響力が凄いのです。そこはTwitterを活用できる若い世代の皆さんに是非期待したいと思います。

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最後に、若手の教職員やこれから目指す人にメッセージをお願いします。

まず、若い皆さんには一つひとつ手をうっていけば必ず明るい未来が待っていることを伝えたいです。あとはこれだけ世論が盛り上がって、先生たちも色んな考えを持つようになりましたよね。
でも、頑張ってこそ教師だという仮面をかぶっているのも事実で、迷いを持ちながら日々働いていると思います。しんどい、変えたいと思っている人は、同じ学校の中に必ずいます。
是非自分に考え近い人を見つけて、思いを共有することで、仲間を増やしてほしいなと思います。そうすると様々なことが変えやすくなるはずです。

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一生懸命頑張っている若い先生たちですけど、間違った方向に辛く頑張らないようになるといいですよね。

まさにその通りですね。
統計上でも若い先生の方が長時間労働ですし、部活動もやらなきゃいけないと思っているのです。やっぱり期待に応えないと、という思いから頑張ってしまうのかもしれません。でもそれを続けてきて、体調を崩したりしているわけです。そうではなく、先生も子どもも過ごしやすくする方向に頑張ってほしいです。
そのためには従来のやり方ではダメで、フレッシュな若者だからこそできることがあると思いますし、仲間を見つけながら頑張ってもらえたらと思います。世代交代が進めば文化も変わりますし、それと同時に行政も変わって行けば、近い将来に長時間労働などの問題も解決していくと期待しています。

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