陽子 さんインタビュー

渕上陽子

ふちがみ・ようこ

第二東京弁護士会所属 弁護士。

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法教育ってどんなことをやるんですか?

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渕上さんは法教育を小中高生向けに行っていると伺いましたが、法教育とはどのような内容なのでしょうか。

法教育というと、「法律を教える授業」と誤解されることもありますが、全然違います。社会の一員として、より幸せに豊かに生きていけることを目的とした実践的な教育で、知識を教えるものではないのです。

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てっきり法律を学ぶ授業だと思っていました。具体例にはどんなことをされているのでしょうか。

法教育の授業にはたくさん種類がありますが、その1つが「ルール作り」です。
学校やマンションなど、生徒にとって身近な場所を舞台に、当番の決め方やペットの飼い方など、ルールを自分たちで作る授業です。
立場や視点を変えて考えたり、友達の意見に耳を傾けたりしながら、皆で1つのルールを作り上げます。授業が終わったときに、ルール、つまり法は、上から制限したり規制したりするために存在するのではなくて、皆が少しでも気持ちよく幸せに生きていくために、自分たちで作るものなんだということに気づいてもらえたらいいなと思っています。

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なるほど、確かにルールは皆が気持ちよく生活するために必要なものですよね。
渕上さんが法教育を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

私は弁護士登録後、特に刑事弁護や消費者被害事件に興味を持って取り組んできました。その関係で、個人的に模擬裁判の指導や消費者被害の講師を頼まれるようになったのがきっかけです。
それから法教育に興味を持ち、弁護士会の法教育委員会に入りました。

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初めは個人的にやられていたのですね。
法教育員会とありましたがこちらではどのような活動をされているのでしょうか。

主に教材作成と各学校への出張授業です。法教育の授業は、先程ご紹介したルール作り以外にも、模擬調停や消費者教育、メディアリテラシー、デートDVなど様々な種類があります。一番人気は模擬裁判かな。授業以外に、裁判所で裁判傍聴の引率をすることもあります。
また、弁護士会ではジュニアロースクールという法教育のイベントを年に1~2回開催しています。学校からの出張授業の要請は、コロナ禍で一時的に減りましたが、去年の春以降、月を追うごとに増えている印象です。本業もあるのでなかなか厳しいのですが、できるかぎり要請にお応えしたいと頑張っています。最近は、オンラインでの法教育授業の割合が増えてきていますね。

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模擬調停や模擬裁判ってどんな授業なんですか?

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すごく色んな活動をされているのですね。
ところで、模擬調停って、何でしょう。

実は、今日のインタビュー前にも模擬調停の授業をしてきました。
裁判所では裁判の他に、調停委員を間に立てて話し合いをする調停という手続きがあるのです。クラス内でA君とB君の間にトラブルが発生したという設定で、A君チーム、B君チーム、調停委員チームに分かれ、作戦会議をやったり、調停で話し合いをしてみたり、という授業です。
最初はお互いの要求がかけ離れていたり、「こっちが全部謝ればすむ」と考えて相手の無謀な要求まで全部のんでしまったりするのですが、調停での話し合いを繰り返しながらよい解決を目指すようになります。
冷静に話し合いをすること、お互いの言い分を聞いて歩み寄って解決することは、簡単なようで実は結構難しいのですが、やはりこれからの社会で生きていくために大切ですよね。

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今年の4月から成年年齢が引き下げられましたが、消費者教育も注目されているのでしょうか?

そうですね。18歳に達すると保護者の同意なく自由に契約ができるようになり、後で「しまった!」と後悔しても、未成年者による契約として取り消すことができません。
生徒たちには、例えば、ペットショップで買った子犬に、生まれつきの深刻な病気があることが分かった、どうすればいいかな?といった身近な契約事例をもとに話し合ってもらいますが、その過程で、契約には責任を伴うことや慎重さが必要なことに気づいてもらえるように工夫をしています。
コンビニでお菓子を買うのも契約ですし、だれもが契約を毎日のように繰り返して生きています。契約に興味を持つことは、社会の一員として幸せに楽しく人生を送るための第一歩だと思います。

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一番人気の模擬裁判はどんな授業なのでしょうか?

模擬裁判はとても人気でイベントをすると多数の応募があって高倍率の抽選になることもあります。ドラマの影響もありますし、子どもたちは謎解き系がもともと好きですよね。
模擬裁判では、子どもたちに劇や動画を見てもらい、裁判官や裁判員になったつもりで、被告人が有罪か無罪かを判断してもらうこともあれば、弁護人役や検察官役に分かれて、証人や被告人に反対尋問・質問をしてもらったり、それぞれの立場から意見を述べたりしてもらうこともあります。模擬裁判では、アリバイ証人や目撃証人も出てきたりします。証人の証言や被告人の供述が信用できるかをグループで検討するのですが、証言をよく聞いたり、証拠を慎重に細かく見ると、あちこちにヒントや気づきポイントがあります。角度を変えると被告人に有利も不利にもなったりするので、頭は使いますが、とても楽しい作業です。

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やはりこちらも法を学ぶ以外にもポイントがあるのでしょうか。

個人的には、プレゼンテーション能力も大事ですけど、いろいろな視点から深くしっかり考えられる力の方が大事だと思っています。
弁護士だって、弁が立つだけでは仕事はできません。説得的な書面を書けるか、交渉で説得できるかが大事で、それはやっぱり、論理的思考能力や分析力があるかどうかで決まってくるので。実際、模擬裁判は、こういった力を身につけるのにうってつけで、法教育の王様だと思っています。18歳になると、裁判員に選ばれることもあります。そのためにも、一度は模擬裁判を経験しておくといいと思います。

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法教育の重要性が良くわかりました。
学校や家庭で法教育をしたい場合、どうしたら良いでしょうか。

法務省でも法教育教材を紹介していますし、法教育の教材を集めた書籍も出ているので、気軽に授業にとりいれていただけるとは思います。また、各都道府県の弁護士会では、無料や安い費用で出張授業をしているので、利用していただくといいと思います。裁判所でもイベントをしていることもあるので、調べてみてくださいね。

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最後に、未来の教職員の皆さんにメッセージをお願いします。

法教育の授業で学校にお邪魔すると、生徒たちが若い先生にじゃれ付いていたり、担任の先生がグループディスカッションを見て「おっ」と感心してくださるだけで生徒たちが喜んだりしていて、先生方って偉大で素敵な存在だなあと、見ているだけで感動します。超過勤務や保護者クレーマーの問題があったりと、ブラックな面が報道されることも多い職業ですが、子どもに勉強だけではなく生き方を教えてくださる学校の先生の仕事は、本当に素晴らしいです。応援しています。

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本当に素敵な職業ですよね。ありがとうございました。