宏次郎 さんインタビュー

​秋山宏次郎

あきやま・こうじろう

一般社団法人こども食堂支援機構・代表理事、SDGsオンラインフェスタ・ソーシャルイノベーションディレクター、企業版ふるさと納税の新たな活用モデル構築検討戦略会議・学識委員。企業から食品の寄付やフードロスを集め全国のこども食堂に100万食以上を提供。大手企業の社員時代から他社や行政に様々な提案をし、10以上の新規プロジェクト発起人として多くの案件を実現に導く。監修した「こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本」は6ヵ月で8刷のベストセラーに。その他、大学での授業、講演、執筆活動など幅広く活動するパラレルワーカー。

子どもから貰った“ありがとう”の手紙で、法人設立を決意

今日はよろしくお願いします。

​早速ですが、秋山さんが現在のお仕事を始めたきっかけを教えてください。

はい、よろしくお願いします。

前職はIT企業の社員で防災に関する仕事の担当になったことがあったのですが、その時にかなりの無駄が出ていることを知りました。例えばその1つが非常食です。東京都の企業は“全社員の3日分”という非常食の常備が条例で定められているのですが、長期保存は可能なものの、賞味期限があるため、期限近くになると大量の非常食を多額のコストをかけて廃棄していたのです。フードロスや貧困問題が叫ばれている中、これはどうにかできないのかと考え、その食料をマッチングできる仕組みを作ったら良いのでは?というアイディアを思いつき、ちょうどアイディアを募集していた内閣府に応募したところ表彰されました。

大手IT企業を退職してまで取り組もうと思ったのは何故ですか?

ちょうどその頃にTBSさんが2000食の非常食を廃棄予定だと聞き、初めて子ども食堂にマッチングをしました。本当はそれで終わりのつもりだったのですが、寄付した先の子どもたちから直筆で“ありがとう”という手紙をもらったんです。本気でやれば桁がいくつも違う量を提供できるであろうことは見えていたので、そのための法人も設立して食料調達に奔走しました。
サラリーマンとしてフルタイムで働きながら法人の代表もつとめるのは大変な部分もありましたが、喜んでくれるこども達の笑顔が勝りました。

それだけ子どもたちの生の声の影響が大きかったのですね。

協力してくれる企業も、それが理由で続けているというところも沢山あると思います。

支援する側も、される側も“皆がHappy”な仕組みをつくる

「こども食堂」と「企業」との橋渡し役、というお仕事ですが具体的にはどんなことをされているのでしょうか?

コロナ禍になり、子ども食堂も運営費がなかなか捻出できないというところも多くあるのが現状なのですが、先程あげたように、食料も余っているところでは沢山余っているのです。こういうご時世だからこそ、少しでも多くの支援をできるように、更に、支援を受ける側はもちろんですが、支援する側にとってもHappyになれるような仕組みを実装することが役割だと考えています。

支援する側もHappyというのはいいですね。継続的な支援には大切なことですよね。

その通りです。例えば、企業版ふるさと納税の仕組みを使った支援が1つの例です。個人のふるさと納税では、地域の名産品などを返礼品として受け取りますが、その返礼品を“〇〇企業様から贈り物です”と手紙を添えて子ども食堂に寄付するというものです。まず、子どもたちは普段なかなか食べることのできない高品質な食材を食べることができます。子ども食堂を利用している子どもたちは、食が偏っている子も少なくありません。普段なかなか食べることができない食に触れることで食育にも繋がります。また、企業側にとっては、ふるさと納税の仕組みを利用することで税の優遇が受けられるので、実質負担はかなり少なく寄付をすることができるのです。やはり、いきなり子ども食堂に寄付をしませんか?といっても、大きな企業などは稟議が通りにくいのが実情です。だけど、〇〇企業からの贈り物、と届けることで、初めてもしくはめったに食べられない美味しいものを食べられた子ども達はとても記憶に残り、将来的にはその子どもたちがロイヤルカスタマーになるかもしれない。そのようにブランド力UPができる広告費と考えて貰うと、企業にとっても非常に少ない額で、大きなメリットがあると導入して貰いやすくなると思っています。実際に北海道の猿払村というホタテが名産の村で賛同してもらい、多くの企業に協力してもらう予定です。

まさに皆がHappyになる仕組みですね。この場合、生産者さんもHappyになれる、三方よしの仕組みで素晴らしいですね!

いかに企業負担を減らすかというところも、中間支援法人として大切な役割だと思っています。もう1つ、プロ野球/Jリーグ/Bリーグ/Tリーグなど、主だったプロスポーツリーグのトップチームとこども食堂を応援するスポンサーメニューの取り組みを考えています。私たちの子ども食堂のネットワークを使えば、ある程度寄付先を指定することが可能です。その仕組みを使い、プロリーグがある地域の子ども食堂に寄付をするというもの。先日卓球Tリーグで優勝を果たしたばかりの琉球アスティーダさんには公式にこのメニュー化に取り組むことを宣言いただいています。例えばアスティーダさんが1勝するたびにスポンサーが一定額のふるさと納税を行い、自治体から買い取った美味しい食材を沖縄のこども食堂に送るような形です。地元のこども達はチームが勝てば勝つほど美味しいものが食べられるわけです。

それは、当然応戦したくなりますね。

スポーツのプロリーグは元々地元との繋がりを大切にしているので、子どものファンが増えることは大きなメリットと言えます。また、子ども食堂も1つひとつの規模は小さく、地域密着型なので良いマッチングだと考えています。

チームにとっては地域貢献にもなって、強力なサポーターが増えるわけですね。これも皆がHappyになれる仕組みですね。

子ども食堂=貧しい家庭の子だけが利用する場ではない

今は全国に広がっている子ども食堂ですが、秋山さんから見てその必要性はどのように感じますか?

子ども食堂というと一般的には貧困層の食を守るというイメージがあると思いますが、私はその限りではなく、関係性の課題にもアプローチできるというのも重要なポイントだと思っています。個々の子ども食堂によっても差はあるのですが、例えば割と裕福な家庭で育っていても、中学生でワンルームマンションとクレジットカードを与えられ、1人で生活しているような子どももいます。そういう孤立していたり隠れた課題を抱える子が子ども食堂を利用することで、少し年上のボランティアの学生さんや、様々な年代のボランティアさんといった大人たちと関わることができるんですよね。年代を超えたコミュニケーションの場という意味合いが強いと思っています。

たしかに、学校に通っていれば同世代の子どもとはコミュニケーションがとれるけど、現代において家族以外の大人と触れ合う機会ってなかなかないですね。

健全な大人たちと多く触れ合うことは、実は凄く大切なのではと感じています。また、現在はコロナ禍で、今までは大丈夫だった子でも、貧困層になる可能性が大きいのです。そういう意味でも、貧困で困っている子どもたちはもちろんですが、子ども食堂=世代を超えたコミュニケーションの場というイメージをもっと広げて、様々な子どもたちが利用できるといいのではと思っています。

学校の先生は全ての子どもたちをケアできる家族以外の唯一の大人

ほとんどの子どもたちは多くの時間を学校で過ごしますが、秋山さんの視点から、学校や先生に求めるものはありますか?

多くの子ども食堂の悩みとして、特にケアが必要な子へのアプローチが難しい、というのがあります。行政や学校との繋がりがない子ども食堂がほとんどなのです。逆に、連携できているところでは、例えば生活保護の申請時にお渡しする書類に一緒に案内を入れたり、学校においては全校生徒へ案内を配ったり、また担任の先生からピンポイントに案内を渡すといった例もあります。やはり、義務教育においては学校で長い時間を過ごすので、個々にケアが必要だと感じることは多いと思います。そこでもっと地域の子ども食堂と連携ができれば、多くの子どもたちをサポートできるのではと思います。

なるほど。子ども食堂側も、ケアが必要な子の情報を求めているのですね。学校や先生からアプローチしてみることで、学校外でのサポートができるかもしれませんね。

そうですね。私たちのような中間支援法人だけでなく、学校や行政など地域ぐるみでサポートしていくことで、より多くの子どもたちを救えるのではと思います。

このサイトを見ている人は、先生を目指す学生さんが多いのですが、そういった皆さんにメッセージはありますか?

学校の先生は、唯一全ての子どもをケアできる存在です。健全な大人でコミュニケーションが取れる健全な大人が学校の先生だけという子も少なくありません。先程も話しましたが、子どもたちはどんな大人と関わるか、ということは非常に重要なのです。子どもたちの人生を変えるといっても過言ではありません。そんな中、全ての子どもたちが接する学校の先生は、子どもたちの人生において非常に重要な存在だと思います。

確かに、学校の先生は子どもたちにとって大きな影響を与えますよね。私も、小学校の時に大好きだった先生のことは凄く覚えています。教師を目指す学生さんに、学生のうちにやっておくといいよというアドバイスはありますか?

色んな友人と関わることですかね。同じ学部の仲間は、同じような夢を持っている子が多いでしょうから同志としてとても良いと思うのですが、全く違う進路を考えている友人と付き合うことも大切だと思います。特に、先生になった時に、会社員の友人がいたりすると、違う視点を持っていて面白いのではないかなと思います。将来は教師になると決めている方も、一般企業のインターンをしてみるのもおススメです。教師を目指している、いないに関わらず、学生のうちに広いジャンルの社会経験を積むことはとても財産になると思います。私もたまに学校での講演を依頼されるのですが、学校外の知識や連携も絡めれば“探究”授業も一層深みのある内容にできると思います。アルバイトやボランティアもいいですね。そうすると自ずと人間関係も広がるのではないでしょうか。

子どもたちの健全な育成に寄与していきたい

最後に、秋山さんの今後の目標や展望などをお聞かせいただけますか?

実は、子ども食堂をもっとこうしたい!とか、こう変えたい!というのは正直ないのです。運営されている方のそれぞれの思いがありますし、特にコロナ禍で運営がまわらなくなるようなところも出てきているのでそれを少しでもサポートしたいという思いです。あとは、皆がHappyになれる仕組みやアイディアをどんどん実装していきたいなということですかね。子ども食堂の支援のみならず、様々な視点から子どもたちの健全な育成に寄与していきたい、というのが一番の思いです。

子どもたちからの“ありがとう”の手紙に心動かされた時のままなのですね。
ここにはまだ書けなかった沢山の仕組みやアイディアがあり、それが実装されたらきっと沢山の子どもたちが笑顔になり、更に関わる人たちもHappyになれるんだろうなと凄く楽しみになりました。こういった、社会に素敵な循環を生む取組みがもっと増えるといいですね。秋山さんありがとうございました。